石材トロッコの模型化[Humanpowered FlatCar]
明治中期から大正期にかけて、我国には人が客車や貨車を押す人力の鉄道「人車鉄道」が存在した。 動力近代化に逆行する人力交通機関であったが、動力としての人件費の安さ、建設コストを含めた初期投資の少なさ、鉄道運行の簡便さ、等が特徴で、主要交通機関(鉄道、河川交通)との接続を目的とした中継的小規模な路面交通機関(軌道)であった。 しかしながら人力による輸送力の小ささと効率の悪さから、押し寄せるモータリゼーションの波には打ち勝てず、昭和初期には殆どの人車鉄道が消滅した。 そこで歴史的にも貴重な人車鉄道の模型化を目指して、石材トロッコの動力化を紹介する。 模型化に当たっては、On30(1/48 16.5mm)とする。 プロトタイプの詳細は、拙著人車鉄道を参照願いたい。
[パワートラック]パワートラックは、FULGUREXのSBB保線作業車セット(HO)のモーターカーの動力装置で、数年前に天賞堂エバグリーンショップで委託品(3万円)を入手したものである。セットはモーターカーのほかに架線作業やぐらと平台トロッコがセットになっていた。 このモーターカーは16.5mmゲージで走行性能が芳しくなかったが、今回使用するにあたり、もとのキドモーターをマシマ製M19-CFに交換しフライホイールを取り付け、更に既存の集電ブラシを外して新たにだるまや製パワートラックから外して来た物を加工して取り付けた。そして入念に調整した結果、スケールスピードで4.5km/hの安定した低速運転が実現できた。車輪径5.5mm、軸距21mmである。 ところで今回採用するパワートラックは車輪のフランジが少し高いため、今のレイアウトではフランジが地面にこすれて車輪が浮き上がり、集電不良を起こしてうまく走れない。そこでヤスリの上でパワートラックのまま車輪を高速回転させて、試行錯誤でフランジを切削した。
貨物トロッコの動力装置が確保できたが、更なる低速安定運転を目指してモーターを高性能なものに変更する事にした。マシマ製M1220は同M19-CFよりも若干大きが、軸径と取付穴ピッチがM19-CFと同一で、スキュータイプのモーターで回転が非常になめらかで、M19-CFよりも低速時のトルクがかなり期待できる。そこでM1220に換装した。 パワートラックのモーターをマシマ製M19-CFから同M1220に交換したところ、低速性能は大幅に向上し、スキュータイプのためかモーターの回転が滑らかで、低速にも関らず機械式フライホイールによる電流瞬断時の惰走効果がかなり認められた。従って、集電不良対策のための電解コンデンサによる電気式フライホイールは不要になった。ただM1220はモーター軸が長いので、ギアー側の一端を切断している。
[トロッコ製作]トロッコは木製で、3×2mm,4×3mmの桧角棒と1mm厚の桧板で木工用瞬間接着剤(ゼリー状)を使用して組み立てた。 大きさは長さ50mm、幅28mm、高さ8.5mmで、パワートラックの大きさから外形寸法を決めている。塗装は、ステインで染めた後にエナメル系塗料の筆塗りでそれらしい色に塗っている。 パワートラックの取付けは、だるまや製パワートラックに付属していた床板固定金具が寸法的に丁度ピッタリだったので、写真のように固定した。モーターサイドに円柱状のウェイト(銀色)を搭載している。 なお一端の歯止棒穴の裏側には、押し夫の握るブレーキ棒の姿勢を安定させるためにアイレット(船舶模型用)でブレーキ棒のガイドを取り付けている。ダミーの軸受はフクシマの軸受けメタルである。 今回のトロッコ製作にあたっては、「犬走志ん第3号」の中部浩佐氏の「On2木製トロッコを作る」を参考にした。
[押し夫]プライザー製Oスケール人形の中に棒を握った農夫がいたので、トロッコの歯止棒穴に棒を差し込んでレイアウト上で種々テストした結果、人形の握っている棒を金属製に取り換え、人形の靴底と地面との摩擦を減らせば、2本のレール間で地面を引きずれる事が判明した。 そこで人形が握っているプラ製の棒をカットし、握り手に直径0.8mmの穴を明け、ブレーキ棒を同径のピアノ線で新製して差込、頭が球面状の釘を靴底に埋め込んだ。 その結果、ブレーキ棒を支点として押し夫の人形が2本のレール間を逸脱する事なくトロッコに引きずられるようになった。 日本人への改造は、塗り換えによる印半纏(しるしばんてん)と股引(ももひき)と脚絆(きゃはん)、糸による鉢巻きと腰紐(ひも)、が改造のポイントである。
[積荷の石材]トロッコは荷台の上に大きくモーターが張り出しているが、これを石材の積荷で隠す事にした。 まず1mm厚の桧板でモーターカバーに相当する箱を組み、表面にスエード調塗料を重ね塗りして厚く仕上げ、次にPカッターで筋目を入れて石材の段積みを表現し、再度スウェード調塗料のグレーとサンドを吹き付けて色を石材らしく表現した。 押し夫は歯止棒穴に差し込んだブレーキ棒を支点に回転するようになっている。
運転は、石材トロッコがブレーキ操作をする押し夫を引きずる事になる。押し夫は2本のレールをガイドに軌道から外れる事もなく、押し夫の姿勢も安定して運転できた。押し夫の靴底が地面に接しているため、見た目も模型としては違和感がない。ブレーキ操作の押し夫は、トロッコに引きずられて地面を滑るが、ザラついた軌道地面だから多少揺れながら走る。かえって押し夫が揺れた方が実感的な感じがする。 運転速度は、モーターの性能が良いため人車の場合よりも若干速く、スケールスピードでエンドレス一周50秒、4.5km/hくらいである。石材は150kgを12本積載(1.8トン)している想定である。
![]() 「鉄道模型趣味」1999年6月号(TMS NO.655)に掲載 |