牛曳きトロッコの模型化

[Bullpowered FlatCar]


 鉄道における獣力は馬が多用されたが、史料によると牛も利用された記録がある。牛曳き貨車は明治から昭和の戦前にかけて、炭坑軌道や林用軌道に記録が存在するが、残念ながら古写真が見あたらない。
 そこで歴史的にも貴重な牛曳き貨車の模型化を目指して、牛曳きトロッコの動力化を紹介する。模型化に当たっては、On30(1/48 16.5mm)とする。

sb-modellbau [パワートラック]
 パワートラックは、sbmodellbau製の軸距32mmHO路面電車用台車(Gauge:16.5mm)を使用した。定価は\26,600。
 製品は真鍮ブロック製の車輪径8.55mm、軸距32mmで、ファウルハーベル製コアレスモータ1319を使用しており、両軸にウォームギアーを付けた1段減速のシンプルな構造で、片側にフライホイールが装備されてる。
 モーターは接着剤で真鍮ブロックに固定されており、集電ブラシは片側のみで配線済みになっており、分解不可能な構造である。
 走行性能は極上の低速安定性能で、ほとんど無音に近く集電不良も発生せず、乾電池1.5Vで滑るような低速安定運転ができる。フライホイールによる惰走効果もかなりのものである。
 ところで今回採用するパワートラックは車輪のフランジが少し高いため、今のレイアウトではフランジが地面にこすれて車輪が浮き上がり、集電不良を起こしてうまく走れない。そこでヤスリの上でパワートラックのまま車輪を高速回転させて、試行錯誤でフランジを切削した。
 
木製車体 [トロッコ製作]
 トロッコは木製で、4*1.5mmの桧角棒と1mm厚の桧板で木工用瞬間接着剤(ゼリー状)を使用して組み立てた。なおパワートラック取付梁は3*3mmの桧角棒で、1mm厚の桧板は筋目入り、ダミーの軸受はフクシマ製の軸受メタルを使用している。
 大きさは長さ60mm、幅28mm、高さ10.5mmで、パワートラックの大きさから外形寸法を決めている。
 パワートラックは台枠にネジ止めした。ウェイト搭載に関しては、パワートラック自身が真鍮ブロックで重量があるため特に考えなかった。
 
御者 [御者]
 御者は荷台に座らせる事にし、プライザー製Oスケール人形の中から座り姿勢の人形を採用した。改造は、塗り換えにより半纏(はんてん)と股引(ももひき)と脚絆(きゃはん)、鉢巻きと腰紐(ひも)を表現した。
 なお後日、草履も表現した。
 
干し草 [積荷の干し草]
 干し草はブリテン製(1/32)のポリエチレンで、4つ並べれば丁度よい大きさになる。ただしモーターの当たりを避けるために裏側を大きくくり抜く必要があるので、ポリ製という事で熱加工してくり抜いた。塗装はダークイエローを吹き付け、糸をかけてロープで干し草が縛り付けられているように表現した。干し草の高さは11mm。
 
完成トロッコ [トロッコ完成]
 トロッコはステインで染めた後にエナメル系塗料で筆塗りし、干し草を船舶模型用ロープで荷台に縛り付けた。御者は干し草の上に座らせ、足掛け用に台を設けている。アクセサリーとして荷台に船舶模型用手桶とエコーのやかん、干し草の上には農具と木箱を配している。なお、パワートラックは外観上目立つ範囲を黒で筆塗りしている。
 運転速度は、エンドレス一周1m29cmを60秒、スケールスピードで3.7km/hくらいの超低速で安定して走れる。動力装置が無音に近いため非常に静かで、電圧はDC1.5Vである。
 
牛 [牛と梶棒]
 牛は渋谷ロフトのギフト売場で\180で売っていたスケール不明の欧州産野牛(AUROCHS)を使用した。そのままの色では和牛にふさわしくないので、フラットブラックグレーに吹付塗装して塗り替えている。
 梶棒は1.8mm径の竹籤と2mm桧丸棒で製作した。梶棒は原木を使用していた場合が多いので、竹籤は少し撓り気味に表現している。
 梶棒の支持支点は牛の横腹とし、ピンで止めて上下動させ、梶棒の上下動を妨げない範囲で腹帯(革ひも)で胴体にくくりつけ、同時に革ひも/その他ひもで尻帯、鼻ぐり等を表現し、細密鎖でアクセントを付けた。
 牛は軌道地面を滑らせて走らせるため、ひずめと地面間の摩擦抵抗を減らす必要があった。
 そこで頭が球面状の釘頭をひずめに埋め込み、地面との摩擦を極力減らす工夫をした。
連結金具  牛とトロッコは連結金具で結合する事にし、パブロ・モデリングのフリーサイズコンタクターの集電ブラシ固定金具をS字に曲げて連結金具とし、トロッコ側はパワートラックの固定ネジを兼用して連結金具を固定し、牛側は梶棒の回転運動を拘束しない範囲で梶棒を連結金具にネジ止めした。

[牛曳きトロッコ完成]
 御者に追い綱を持たせて完成した。追い綱を御者の手に接着した関係で、牛とトロッコは連結を外す事が困難になったので、固定編成としている。
 
牛曳きトロッコ

[牛曳きトロッコの運転]
牛曳きトロッコ  牛がトロッコを曳くのではなく牛がトロッコに押されて軌道を滑る事になる。牛は2本のレールをガイドに軌道から外れる事もなく姿勢も安定して運転でき、牛のひずめが地面に接しているため見た目も模型としては違和感がない。
 重量のある牛をトロッコが押さなければならないので、トロッコ単機(3.7km/h)の時よりもスピードを上げざるを得なかった。牛は2本の前足がレール軌間幅近くまであるので、低速すぎると直線部分は問題なくてもR120の急曲線で前足のひずめがレール側面にこすれてブレーキがかかり、エンストを起こしてしまう。
 そこで運転速度は、スケールスピードでエンドレス一周(1m29cm)48秒、4.64km/hくらいに調整して走らせている。牛曳きトロッコとしては妥当なスピードだと判断している。電圧はDC1.5Vである。
 牛は滑るとは言うもののザラついた軌道地面であるから、多少揺れながら走る。かえって牛が揺れた方が実感的な感じがする。
 製作期間は、当初馬曳きでスタートしたが途中で牛曳きに変更したため、2ヶ月かかった。特に牛に変更してから結構時間がかかった。なぜなら、牛は馬よりも重量があり更に梶棒支持位置を横腹にした事による牛の走行姿勢の安定化が非常に難しいかったからである。